2022/01/28第一回、第二回の記事ではO&Mの必要性や適切なコスト、安定した発電のためのオペレーション(運用管理)について解説してきました。太陽光発電所の場合、FIT電源として運用していくためには適切なオペレーションはもちろんのこと、メンテナンスも絶対に欠かせません。その一方、質の低いメンテナンスが横行しており、知らない間に売電収入を減らしている例も多く存在します。最終回となる今回は「メンテナンスの重要なポイントについて」や「メンテナンスが本来果たす役割とは」、そして「メンテナンスの将来像」について、afterFITで品質管理 O&M 統括を担当する小林悦郎が解説します。「メンテナンスをサボる」O&M会社に要注意メンテナンスで行うのは、設備の保安点検と維持管理です。まず保安点検ですが、これは定期的の実施が必要です。目視による点検では、主要な部分を検査し、異常に発展する恐れのある場所を発見。維持管理にて異常箇所の修理を実施します。とはいえ、O&M会社によって、目視による点検のレベルはさまざまです。なかには行ったふりをしただけで、実際には行っていない会社の話もよく耳にします。一度、他社にメンテナンスを依頼している発電所オーナーの相談を受けて保安点検に行ったところ、パネルの間から木が生えているようなことがありました。これは現地に足を運んでいれば、見過ごすことはないでしょう。また発電所内を歩いてながめるだけ、というO&M会社にも注意しましょう。現地で写真を撮影し、レポートとしてお客さまに提出すれば点検として成立してしまうのです。そういったO&M会社の場合、パネルの表面すら見ていないので、パネルのひび割れなどが見過ごされているケースが散見されます。目視といっても、一目でわからない異常やそこに至る前の兆候をきちんと見つけていくことが大切です。メンテナンスで重視すべきポイントと起こりうるトラブル実は太陽光パネルは表面だけでなく、裏側の点検も重要です。例えばコネクターが接続・施工不良だと発火・融解が発生する恐れがあります。また、コネクターが水のたまる部分に固定されていたり、パネル裏面が異常により発熱し、焦げてシステムの絶縁劣化を引き起こし、パワーコンディショナー(パワコン、PCS)停止に至ることもあります。そうなると発電できず、売電収入がゼロになってしまうのです。パネルを支える架台の点検についても同じことが言えます。パネルを固定しているクランプや、架台の支持部分が設計通りに固定されていれば台風などの強風時でもパネルが飛ばされたりすることはありません。しかし、こういうところにもゆるみが発生しているケースが多いので、注意が必要です。このような発電所に大きく影響のある異常は、適切な点検が行われ、異常を把握・対応することでほとんどが対処できます。地面そのもののチェックも欠かせません。とりわけ台風のあとは慎重な点検が必要です。特定の部位に常に水がたまり、腐食しやすい状況になっていることもあるからです。このように、O&M会社によってメンテナンス作業の内容には大きな差があり、結果として発電所の健全な運営面に差が出ます。発電事業者はこれらの点に注意し、適切なO&M会社による適切なメンテナンスを行っていくことが必要です。afterFITはドローンでパネル内部を点検afterFITでは、目視だけでなく、サーモカメラを搭載したドローンによる発電所点検も実施しています。熱を検知するサーモ機能によりパネル内部を見ることができ、ホットスポットやクラスタ故障など、目視の点検ではわからない異常を発見できるのです。異常が発生し、発電量低下または発電していないセル、クラスタ、パネル、ストリングスは発熱するので、サーモカメラで発見できます。ドローンは1MWあたり15分で点検を終えることができます。点検日数が短いことから、点検レポート提出も通常1カ月かかるところを1週間に短縮可能です。これにより、発電量の減少を抑えることができます。そして点検結果をすぐに事務所に共有できます。通常1週間かかるレポート提出を1週間にまで短縮できるなど、トータルコストを劇的に下げることが可能です。発電機器の交換もメンテナンスの一環適切なオペレーションを行い、きちんとメンテナンスを行っていても、機器の劣化や故障は発生します。FITで設備認定を受けている場合は、少なくとも買取期間の20年間は運転することになりますが、その間に寿命を迎えるケースもあります。例えばパワコン。20年の間に1度交換する必要がある製品もあります。また、UPS(無停電電源装置)の場合、3年に1度は蓄電池の交換が必要です。こうしたことから、メンテナンス計画の中に機器の交換が織り込まれています。特に、20年間のメンテナンスコストを計算する場合は、機器の交換のコストも含まれていますし、またそうしたコストを含めたメンテナンスコストが見積もられているかは、融資先の金融機関からも厳しく指摘されます。とはいえFITが終わったあとは発電単価が下がるため、メンテナンスコストに対しても、なるべく下げていく必要があるでしょう。自然エネルギー財団の報告書では、2030年頃には、草刈りや修繕費を含め、0.19万円/kW(1年あたり)になるとしています。発電事業者のコスト圧縮希望に応えられるよう、O&M会社側もコスト削減を進めながら品質を維持することが求められます。例えば、現場に足を運ばなくても正しい点検ができるようなしくみも必要になるでしょう。太陽光発電パネルやパワーコンディショナー(パワコン、PCS)などの設備がどんどん値下げしている点からも、原価構成的に考えて「リーズナブルで高品質なメンテナンス技術の確立」が必要になってくるといえます。とはいえ、それはまだ先の話であって、現状は適切なコストをかけてきちんとしたメンテナンスを実施し、安定した発電を維持していくことが、太陽光発電事業の収益改善には不可欠となっています。そして、O&Mを適切に行っていないメンテナンス会社が多いこともぜひ知っておいていただきたいです。当社では発電量を最大化できるよう、スタッフが適切なO&Mを行いますので、ぜひお問い合わせください。【2022年】太陽光発電のO&Mで売電収入が増える!運転管理・保守点検を解説【第一回】5分でO&Mがわかる!利益を増やす太陽光発電のオペレーション(運用管理)とは?【第二回】プロフィール小林 悦郎1963年生まれ。山口県岩国市出身。メーカー、IT人材派遣などの企業にてプロジェクトマネージャー、経営企画を歴任。その後、afterFITにて分析チーム、情報システムチームを経験し、現在はO&Mチームの統括を担当している。